岡山地方裁判所 昭和47年(わ)272号 判決 1979年9月18日
本店所在地
岡山県岡山市岡町六番八号
株式会社水島土木
住居
岡山県倉敷市連島町亀島新田一一三〇番地の二
右代表者
千甲童
本籍
韓国慶尚南道固城郡東海面陽村里
住居
岡山県倉敷市連島町亀島新田一一三〇番地の二
会社役員
赤沢次郎こと千甲童
一九二二年一二月三日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、検察官佐藤信昭出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人両名は無罪。
理由
公訴事実は、別紙記載の通りである。
しかるところ
一 被告人会社代表者兼被告人千甲童の当公判廷における供述
一 証人正木質の当公判廷における供述
一 弁七、九、一〇(昭和四三年度)、弁一三、一五、一六(昭和四四年度)・法人税等の更正通知書および加算税の賦課決定通知書
一 弁一二(昭和四三年度)、弁一八(昭和四四年度)・「審査請求をすることができる旨の教示について(通知)」と題する書面
右各証拠によれば、被告人は、公訴事実記載の当初申告後、昭和四六年八月二四日、各年度分について修正申告をし、これに対して、岡山税務署長は、各年度分について、それぞれ、昭和四七年三月三一日付第一次更正処分(弁七、一三)、同年六月二七日付第二次更正処分(弁九、一五)、同年六月二九日付第三次更正処分(第一次更正処分のやり直し)(弁一〇、一六)をし、かつ、第三次更正処分に対する各異議申立に関し、同年一二月二六日付各通知書(弁一二、一八)を発していることが明らかであつて、所得金額の推移は、別紙所得金額(円)対比表のとおりである。
そして、昭和四三年度分については、弁七の「翌期首現在利益積立金額」と弁一二の「社内留保」と、昭和四四年度分については、弁一三、一六の各「翌期首現在利益積立金額」と弁一八の「社内留保」とは、申告脱漏所得を表示するものとして、いずれも、本来合致すべきものであるところ、その内訳である科目別金額は、別紙損益科目・金額(円)対比表のとおりであつて、預金、仮払金、貸付金、仮受金の金額に著しい相異があり、この相異は、通常生じうる誤算、誤認として看過しえないところである。このことは、公訴事実記載の所得金額の算定の基礎が甚だしく不確実なものであることを示すものであつて、たとえ水揚げ所得を算出しても、証拠上、公訴事実(公訴提起の理由)にそう更正処分の所得金額の認定について、その厳正さを底礎するに足りる合理性、すなわち、右著しい相異の合理的根拠を見い出し難いから、刑訴法三三六条後段により、無罪の言渡をする。
(裁判官 平井哲雄)
別紙
(公訴事実)
被告人株式会社水島土木は、岡山市岡町六番八号に本店を置くとともに、倉敷市明神町四番五〇号に営業所を設けて埋立・造成工事等の事業を営むもの、被告人千甲童は右会社の代表取締役として業務全般を統括しているものであるが、被告人千甲童は右会社の業務に関し法人税を免れる目的をもつて
第一、昭和四三年一〇月一日より同四四年九月三〇日までの事業年度における同会社の総所得金額は七七、四〇二、二三九円で、これに対する法人税額は二六、六四四、八〇〇円であるのにかかわらず、架空の外注費、修繕費等を公表帳簿に計上して真実支払をした如く装い、簿外となつた現金を架空名義の預金にする等してその所得の大部分を秘匿したうえ、昭和四四年一二月一日岡山市天神町三番二三号所轄岡山税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は、一四、九一一、七四六円で、これに対する法人税額は四、七八〇、二七〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により法人税二一、八六四、五三〇円を逋脱し
第二、昭和四四年一〇月一日より同四五年九月三〇日までの事業年度における同会社の総所得金額は二二、五三五、四〇三円でこれに対する法人税額は七、七三七、三〇〇円であるのにかかわらず、架空の外注費、修繕費等を公表帳簿に計上して、事実支払をした如く装い簿外となつた現金を架空名義の預金にする等してその所得の大部分を秘匿したうえ、昭和四五年一一月三〇日前記所轄岡山税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は七、九七七、五五八円で、これに対する法人税額は二、三九八、五八〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により法人税五、三三八、七二〇円を逋脱し
たものである。
別紙
所得金額(円)対比表
<省略>
別紙
損益金科目・金額(円)対比表
<省略>